2020/03

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唐突ですが、イギリスの登山家であるジョージ・マロリーをご存知でしょうか。

マロリーの活躍の舞台は、世界最高峰であるエベレストの初登頂を目指し、世界各国の有力な登山家がしのぎを削った1900年代前半です。

 

1921〜1924年にかけ、イギリスのエベレスト遠征隊に招聘されたマロリーは、

第1次の遠征(1921年)において、エベレストの山そのものに初めて足を踏み入れた最初の人間になったとともに、その後のルートを見出しました。

第2次の遠征(1922年)においては、当時の人類の最高到達高度記録(8,225m)を無酸素において打ち立てました。

第3次の遠征(1924年)においては、念願であったエベレスト初登頂への期待を一身に、6月8日の朝、標高8,230mの最終キャンプを出発しました。

この時、マロリーと行動を共にしたのが、同じイギリスの登山家であるアンドリュー・アーヴィンでした。

 

7M300163.JPG

[α7iii,Planar T* 50mm F1.4 ZA SSM,1/500,F2,iso100]

 

頂上を目指した2人を最後に目撃したのは、2人のサポートのために単身最終キャンプを目指していたノエル・オデールでした。

12時50分頃、8,077m付近にいたオデールは、頂上直下の最大の難所(2nd ステップ)を登攀中の2人の姿を目撃しました。

そして、これが2人の生前の最後の姿となりました。

オデールはこの時目にしたものを生涯忘れることがなかったといいます。

これを最後に2人は姿を消し、2人がエベレスト初登頂を果たしたのか否かについては、永遠の議論を呼んでいます。

 

もっとも、1933年のイギリス隊の征隊により、標高8,460m地点でアーヴィンのものと思われるつるはしが発見されていることから、

アーヴィンの滑落によってマロリーも引きずられることを余儀なくされたのであろうとの見方が大勢を占めました。

一方で、マロリーの卓越した登山技術をもってすれば、必ずや初登頂を果たしたであろうとする声も止むことはありません。

 

この謎は永遠の謎のままですが、2人が消息を絶って75年後の1999年に国際探索隊によってマロリーの遺体が発見されています。

 

7M300168.JPG

[α7iii,Planar T* 50mm F1.4 ZA SSM,1/500,F2,iso100]

 

さて、前置きが長くなりましたが、写真の梅は吉井本郷にある唐崎神社です。

正確に言うと、唐崎神社の境内にある「天満宮」に寄り添うように咲いている梅です。

 

何でしょう。

思いがけず出会った光景に、思わず声を上げて近寄ってしまいました。

そう、この時、もし私が「何故、梅を見たいのか」と問われたら、きっと「そこに梅があるから」と答えたでしょう。

所謂「Because it's there. 」というやつです。

 

この日「何故、梅を見たいのか」と私に問うたのは私自身です。

そして「そこに梅があるから」と答えたのも私自身です。

その瞬間、マロリーの「そこに山があるから」という有名な言葉を思い出してしまいました。

同時に「そこに山があるから」という意訳が誤訳とも言える危うさを含んでいることも…。

 

この言葉が生まれた経緯については、ニューヨーク・タイムズの記者が

「Why did you want to climb Mt.Everest?」(何故あなたはエベレストに登りたいのですか?)

と問うたことに対し、マロリーは

「Because it's there」(エベレストが存在するから)と答えたというものです。

 

この時、記者に囲まれたマロリーがとても辟易として、この問いに対してぞんざいに返答したというような内容をどこか読んだ気がします。

しかし、これは直訳と意訳の差から生じた悲劇でしょう。

というより、そもそも「訳す」という行為が生んだ悲劇なんでしょう。

 

この言葉に限らずですが、「Because it's there」の意味については「Because it's there」でしかありません。

要は何を言いたいのかと申しますと、私が梅を撮った理由も「Because it's there」であるということです。

 

 

 

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