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「下ノ廊下 2019」 I

2019.11.01 Friday

 

さて、下ノ廊下(Shimonorōka)です。

黒部ダムから下流の黒部川です。

所謂、黒部峡谷の核心部と呼ばれるところです。

 

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[α7Sii,FE 16-35mm F2.8 GM,1/160,F5.6,iso100]

 

私がそこへ行ってみたいと思うようになったきっかけが「水平歩道(Suiheihodō)」の存在でした。

たぶん、その存在は結構以前から知っていたんだと思うんですが、TVでその存在を改めて認識したことが契機になったんだと思います。

そして、それがきっと4〜5年くらいも前のことだったんでしょう。

 

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[α7Sii,FE 16-35mm F2.8 GM,1/160,F5.6,iso100]

 

そこで生まれた「行ってみたい」という思いが、3年前に私の足を「日電歩道(Nichidenhodō)」の袂へ運ばせたんだと思います。

もっとも、ただ漠然とした「行ってみたい」という思いが具体色を帯びたのは、今年の7月に欅平駅に足を運んだ時でした。

水平歩道へと続く登山道の入り口を確認したことで、一気に気持ちが前のめりになりました。

 

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[α7iii,Planar T* 50mm F1.4 ZA SSM,1/1250,F2,iso200]

 

具体的にどのようにアプローチしたら良いかを考え出したのはそれ以降です。

恥ずかしながら、下ノ廊下の歩行区間が日電歩道と水平歩道に区分されることを知ったのはつい最近のことです。

それまでは下ノ廊下=水平歩道と思っていましたから…。

 

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[α7Sii,FE 16-35mm F2.8 GM,1/160,F5.6,iso200]

 

一般的にこの行程は2日がかりです。

黒部ダムから下流を目指すにしても、欅平駅から上流を目指すにしても、中間点より下流側にある阿曽原温泉小屋を中継するルートが一般的です。

 

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[α7Sii,FE 16-35mm F2.8 GM,1/160,F5.6,iso200]

 

今回、私が選んだのは黒部ダムを起点として下流を目指す行程でした。

しかし、その行程は欅平駅を目指すものではなく、道中にある「十字峡(Jūjikyō)」と呼ばれる景勝地を往復するものでした。

 

陸路の移動は昔から車に限ると決めています。

しかし、欅平駅を目指すとなると、起点から終点までの車輛配送サービスを利用する必要があります。

これが結構高額です。

 

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[α7Sii,FE 16-35mm F2.8 GM,1/60,F5.6,iso800]

 

勿論、車輛配送サービスを利用せず、電車を乗り継いで起点まで戻ることも十分可能ですが、そこは、時間に縛られることを嫌う私の性格が災いしました。

もともと「計画的」ということが苦手です。

そして、そんな高尚なことができません。

そうした背景と併せ、現実問題として私自身が「まったくの初心者」であることも踏まえ、今回は無理をせず、あくまで「試行」と考えることで

今回のような往復ルートを選択することとしました。

 

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[α7iii,Planar T* 50mm F1.4 ZA SSM,1/160,F2,iso200]

 

日電歩道から水平歩道へと至る「下ノ廊下」は、歩くことに関しては特段難しいことはないと聞いていました。

ただ、その特殊性 --- 狭い道幅。転落防止柵等がない。歩道と川の最大落差は100m以上。エスケープルートは一切ない。当然、落ちたら即、死 --- から、

難易度としては「上級者向け」に位置付けられています。

この日のために、ようやくトレッキング・シューズを始め、それなりの装具を購入した私なんかがいきなり高望みはできないという意識は、

無理矢理にでも持っておく必要があると、自らに理解と認識を求めながらこの日に至ったところでした。

 

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[α7Sii,FE 16-35mm F2.8 GM,1/60,F5.6,iso1600]

 

この日 --- そして、翌日 --- の宿泊先である「ロッジくろよん」さんの夕食です。

ご飯はおひつごと、みそ汁は大鍋ごと各テーブルに置かれています。

ご飯とみそ汁と、3杯ずついただきました。

座席指定ですが、お膳の右側の札を見ればすぐに分かるようになっています。

つまり私は、この日「211号室の1名様」の宿泊客です。

もっとも、相部屋ではありましたが、このことについては予約時からお伝えいただいていたことですので驚きはしませんでした。

(とか何とか言って、チェック・イン時に何もお伝えいただかなかったもんですから、部屋のドアを開けたら、おじさんが寝ていたことには驚きました)

 

こちらのお宿につきましては、チェック・イン時に宿帳に記載し、料金を支払います。

今回の私の場合は、初日は1泊2食(夕食+翌朝食)付で10,500円。

翌日は1泊3食(昼食+夕食+翌朝食)付で11,100円でした。

時期によって変動するのかも知れませんが、翌日の朝食と昼食はお弁当にして前夜のうちに手渡ししてくれます。(各部屋に届けてくれます)

 

 

 

さて、夕食後についてです。

私が夕食を終えて19時前に部屋へ戻ると、既に相部屋のおじさんはご就寝になられていらっしゃいました。

私は翌朝5時の出発を予定していましたが、さすがに就寝するには早すぎるため、ロッジ1階の共用スペースへと足を運びました。

そこで自販機のビールでも飲みながら、備え付けの漫画でも読もうと思っていたんですが、そのスペースは"夜の社交場"にもなっているようでした。

 

いずれも5〜60代と思しき別パーティの男女6名が、ビールや缶酎ハイを呑みながらキャッキャしておりました。

もちろん、会話の内容は翌日の行程のことです。

会話を聞いたところ、一部男性を除いては「初めての下ノ廊下」という方が大半でした。

 

実は、私がここへ来たタイミングでのニュース等の報道では、「下ノ廊下」においては、「この3日間で4名が転落死」という状況でした。

10月に限れば5名が転落死しているとのことでした。

この社交場でも「こないだ転落した人、知り合いだったんですよ…」というような声が聞かれました。

初心者の私としてはそういったニュースは当然知ってはいましたが、無理矢理にでも、自分にも十分にあり得る話として理解しようとしていました。

 

そういえば、チャック・インの際にロッジのご主人が伝えてくれた情報です。

 

「十字峡へ向かう手前の"大ヘツリ"なんだけどね」

「はい」

「落石でう回路が壊されて、通れなくなったから」

「そうなんですか?じゃあ、元の歩道を通過するということですか?」

「あ、行ったことある?」

「いえ、ありません。情報として知っているだけです(笑)」

「そう(笑)」

「でも、元の歩道は通過できるんですか?」

「うん。それは、自己判断してもらうしかないよね」

「承知いたしました…」

 

その箇所については、数年前に元の歩道が落石の直撃を受けて、大きなクラックが発生してしまいました。

そのため、危険のある元の歩道を迂回する形で壮大な梯子がかけられていたんですが、今回は落石によってう回路も破壊されてしまったということです。

よって、崩壊の危険のある元の歩道を歩くことになると…。

しかし、これは安全を保障する話ではないので、あくまで自己責任によると…。

 

私がここ数ヶ月、毎日情報収集のためにお邪魔していたサイトが「阿曽原温泉小屋」です。

こちらの「登山情報」のページには、日々の下ノ廊下の歩道の整備状況等の情報が更新されています。

チェック・インを終え、部屋へ入ってから早速こちらのサイトにアクセスしてみたんですが、同情報についての記事が既にアップされていました。

私としては、「まずは、その場所まで行ってみる」ということを考えていました。

 

正直なところ、今回の「下ノ廊下」については未知数部分が多すぎたこともあり、私自身、「本当に歩くことができるのか??」という思いがありました。

ひょっとしたら、足がすくんで動けなくなり、すごすごと退散することも想定されるんだろな…と。

まして、こちらのう回路についても、これまでの情報収集の中で「本当に自分がこんなところ歩けるの??」と自問自答していました。

気分的に少しだけホッとした、、、というのは、否定はできません。

 

話しは逸れましたが、社交場においても話題がその部分に集中するようになりました。

やがて「阿曽原温泉小屋のサイトは見た??」「まだ見てない」という話になりました。

あれやこれやと、サイトさえ見れば得られる情報について、皆さんが議論していらっしゃいました。

 

恐る恐る、隣の椅子席にいらした女性に当該記事の掲載ページを表示したスマホを差し出しました。

 

「あの。すみません。色々と耳に入ったもので…。コレをどうぞ」

「あら、ありがとうごいます」

「迂回区間の距離とか、書いてあります」

「あら、迂回区間は14mですって。危ない箇所は5mですって」

 

そんな時間を過ごしていたんですが、私もビールを2本も飲んだところで酔いが回ってしまい、早々に退散することにしました。

布団に入ってからも色々と考えることが多くてすぐには寝付けませんでした。

 

熊に遭遇してしまい、何とか頑張って対処しているという夢に苦しみながら、寝たのか寝てないのかも分からず朝を迎えました。

4時30分起床予定でしたが、結果として、予定より早く目を覚ましていました。

相部屋のおじさんの行動は私より1歩2歩先を行っていました。

前の晩の社交場の方々も起きだしていらっしゃいました。

5時にロッジを出発したのは、私がいちばん早かったのかも知れません。

なぜそんなに早かったかについては、追ってお伝えしたいと思いますが、玄関を出たところで相部屋だったおじさんに会いました。

おじさんはまだ出発前のようでした。

 

「お先に行きますね」

「おぉ。もう出るかね」

「私、十字峡でUターンするので、また道中でお会いしましたら…」

「おぉ、気を付けてな」

「お互いに」

 

ロッジから黒部ダム駅までは約30分です。

まだ真っ暗な道を1人歩きました。

ここへ来て、熊鈴を持ってこなかったことがとても気がかりになっていました。

「万一、ここで熊が出没したらどうしよう」

 

一方で、そんな風に思いながらも、「そうなったら、そうなったまで」と冷静に開き直っている自分もいました。

熊のいない佐渡の山を歩く気軽さを「当たり前」と思って生きてきました。

今、こうして歩いている、いつ、どのタイミングで、これまで経験したことのない事態に巻き込まれ得るプレッシャーは相当以上です。

大袈裟かも知れませんが、「次の瞬間、自分の人生は終わるのかも」。

そんな風に思い続ける1日が始まりました。

 

 

 

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コメント
こんばんは(^-^)

とてもとてもとても危ない所だったんですね(゚o゚;;
無事に帰って来てくれてよかったです!!

安心して、ドキドキしながら、続きを読めそうです。
華さんの次のお話と写真を楽しみにしています(^-^)
  • by ちよ
  • 2019/11/02 9:47 PM
ちよさん、こんばんは!
いつもありがとうございます(^^)

とてもとても危ない所です。
でも、しっかりとした準備と、当たり前の行動をしていたら、そうでもないとも思いました☆
そして、これまでに見たことのない素晴らしい光景の数々を見て、体感できる場所でした(^^)

…とか何とか言って、私も無事に帰ってきてホッとしてます(^^;
  • by 華
  • 2019/11/02 10:16 PM
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